読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

無欲、それは苦しい

26歳OL一人暮らし

ババアとババアの席の譲り合い

ババアは座らないと死ぬというイメージが浸透している。ババアは小刻みに揺れやすいものだから、みんなババアを座らせようとする。ババアは揺れすぎると爆発して危ないのだ、危なっかしい存在。その昔、姥捨山ではまだ息のあるババアが揺れあって、大きな爆発を起こしたと言われる。そんなものは伝説であって、ババアが爆発することは今やそんなにない。医療の進歩のおかげだ。医療の進歩でババアが小刻みに揺れても爆発しにくくなった。そんなことはみんな理解しているけれど、それでもババアにはみんなすすんで席をゆずる。

特にババアとババアの譲り合いはすごい。座って安定していたババアがいきなり席を立って、ババアを呼ぶ。そのババアに座れと言うのだ。ババア同士ではどうにもどらちがよりババアなのか分かるらしく、より深刻なババアには席をゆずる傾向にある。その勘がより譲り合いを深刻にする。

どちらも座らないのだ。

これはとても恐ろしい姿である。爆発するかもしれないババアたちが安定状態を解除して、あまつさえ喋って、ねぇあなたがお座りなさいよ、私もうすぐ降りるからなんて言い合ってる。そんなことどうだっていい、どうだっていいんだ。周りの若者たちはハラハラする。このババアたちはいつ爆発するんだ?!どっちが爆発するんだ?!大丈夫、もうババアが爆発することは稀だって聞いてる、けれどもこんなの不安だ…!

「どうぞ…!!」

ババアたちが立ってフラフラしてる様に、一人の若者が勇気を出す。ババアを二人とも座らせる算段だ。いい判断をする若者である。君は英雄だ。

「いいのよいいのよ、アタシほんとに次の駅で降りるし」

若者の勇気はポッキリ折られてしまった。電車はまた動き出す。ババアたちはまだどっちが座るかで話し合ってる。車両は揺れた、ババアも揺れた。そうして車両はただの鉄くずになってこぼれていく。